自然農挑戦日記その8「自家採種」

2015年11月1日(日)|category : 畑と庭と台所

DSC_0645

 

 

自然農チャレンジ1年目のひと葉の畑は今、出足が遅れた夏野菜と、ぐんぐん成長中の冬野菜が混在している。空を仰げば、魚沼三山は初冠雪を迎え、朝夕のぶるっとくる寒さは、里雪ももう間もなくであると教えてくれているようだ。

 

雪が降る前に出来得る限りの種取りを済ませたいところ。自家採種は自然農にとって最も重要な鍵である。種にはこの1年の記憶が刻まれ、この土地の気候風土に添うように遺伝子は受け継がれ命を繋いでいく。雄性不稔のF1種の種には命のリレーが出来ない。F1種は作物の形が均一で収量が多く、成長が早い、そして甘くて柔らかいといった生産者と消費者の願いをかなえるよう品種改良された種だ。F1種が広まりだしたのが1940年代。今やホームセンターで売られている種も、苗も、スーパーで売られている野菜も主流はF1種だ。そうでない物を捜すのは非常に困難な状態だ。そしてそんな中、ミツバチは精子を作れない雄ばかりが増え、人間の精子も過去50年で半減しているとWHOの会議においても報告されている。

 

さて、種取り。いまの所、きゅうりとバジル2種、レタス、赤唐辛子の種とりが完了。このあと、茄子とトマトと神楽南蛮もチャレンジ予定。ひと葉の畑の作物は全て種から育てた。種は、在来種もしくは固定種を取り寄せた。自然農が初体験なら、種取りも初体験。果たしてこの種取りのやり方でよいのだろうか、時期はこれでよいのだろうかなどなど、手探り状態である。来年、これらの種で芽が出て収穫できるかどうか、やってみなければ答えはわからない。気の長い話である。自然はわたしたちの問いかけに必ず答えをくれるけれど、それはとってもゆっくりなのだ。それに対しいつでもひとは急ぎ過ぎている。パソコンやスマホで何でも検索できて、疑問にも知らない誰かが懇切丁寧に答えてくれる。自分なりに本で調べたり、ひとから学んだり、実際に体験して身に着けたりということが抜け落ちてしまった。

 

私宛にもリースの作り方に関して問い合わせのメールが時折来る。「はじめまして」のその方たちに(体験教室を開催するという企画者や指導者である場合が多い)これまでの何年もの経験を文章として組み立てメールという安易なツールで説明するほど(おそらくどんな問いであれ1時間はかかる)暇でもなければ、親切でもない。みんな急ぎ過ぎている、あまりに安易に答えを導き出そうとしている。そういう方たちには「教室に来てください、来ていただければ余すことなくお教えします。それが出来ないのなら、どうぞ、自分なりにやってみて下さい」と、答えている。どんな立派な教則本を読むより、どんな立派な指導者の話を聞くより、体験こそが一番確かな道である。

 

 

さぁ、種を取ろう。