雨の日のひとり言(長文なり)

2016年5月25日(水)|category : 北の森通信

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5月19日のメドゥガーデン、日々加速する草木たちの成長。今はさらに緑は増している。

 

 

ここ二日、日本の最高気温を記録した十勝もきょうは雨。

一気に夏かと思いきや今朝はたまらずストーブをつけた。

雨はガーデナーにとってちょっと一息の休息日、移植したての苗たちも喜んでいるだろう。

 

大木の移植から始まった庭仕事は、短いシーズンを生き急ぐように加速しだした草花の成長を追いかけるように進行していく。除草、移植、剪定、ポット苗の鉢上げ、植栽、それらが、植物の成長加減と天候などのコンディション、その日のメンバー等を考慮した上で最優先事項を判断したヘッドガーデナーの指示のもと、繰り返されていく。徹底したプロ意識のもと、ただひたすらに美しい庭を作る。

 

千年の森でガーデナーの仕事を初めて1ヶ月、「庭って何なんだろう?」と思索する。

そして「庭は誰の為のもの?」と。

 

個人の庭の場合答えは簡単、庭は持ち主の物、そして持ち主の為の物。例えばターシャの庭は「庭は私のパラダイスよ」と彼女が語ったように、ターシャの宝物であって、生きがいである。ターシャはお客様の為に庭を作ったわけではなく、その生き方に共感したひと達を結果的に引き寄せた。

 

入場料を払って観覧する千年の森のような施設は、庭はオーナーの物であって、お客様の為の物なのであろう。決して、ガーデナーやガーデンデザイナーの物ではない。では、ガーデンデザイナーは、誰に向かってどんなコンセプトで庭をデザインするのか。それは庭の持ち主であるオーナーが設定するコンセプトに沿うこととなる。

 

千年の森のオーナーは地元の優良企業「十勝毎日新聞」。「環境貢献活動『カーボンオフセット(炭素の相殺)』を起源に、森、庭、農、アートと様々な手段を持って、ひとと自然が触れ合える機会を創出する」というのがコンセプト。

 

決して、千年の森は装飾的な花だけをメインに展開するガーデンではない。

 

メドゥガーデンの庭作業をしていると「花が全然ないね」というお客様の言葉をよく耳にする。宿根草中心のメドゥガーデンにとって、5月は芽出しの時期で植物は青々とした葉を日々グングンと茂らせる。その葉の合間に、よく見れば、クリスマスローズが、青紫のプルネラが、キンポウゲ科のイエロークインが、アネモネのマドンナが群れを成して咲いている。確かにそれは公開面積およそ50ヘクタールという総面積からすればほんのひと握りだ。

 

だが、日高山脈に向かってファームガーデンを臨めば、ローズガーデンのレイズドベット、オーチャードガーデン(果樹の庭)、ゴートファーム(ヤギと羊の庭)の、その牧歌的風景に心癒される。また宿根草の庭メドゥガーデンを日高に向かって眺めると草原から林縁、そして森、山脈へと続く自然な流れの美しさに感嘆する。

 

 

足元の緑陰の花、林縁から草原への芽吹き、様々な葉姿の競演、そして雄大な自然と共にある庭の情景を感じてほしい。

 

 

昨日はローズガーデンで施肥作業をしていた。

外国人旅行者に剪定について質問された。

「アイキャントスピークイングリッシュ」と詫びつつ、簡単な挨拶のみを交わす。

彼女が何度も繰り返して言った「ここはとても素敵な場所ね」と言うフレーズだけは聞き取れた。

 

 

 

 

 

追記:わたしは職業ガーデナーにはなれません。ターシャのように「私のパラダイス」を作ります。